ピアノのある部屋から

ピアニスト、中添由美子がピアノのこと、教室のレッスンのこと、ロシアのこと、その他日々のいろいろを書き綴ります。

パーヴェル ネルセシアン ピアノリサイタル(5月14日 東京文化会館)

 現在モスクワ音楽院の教授もつとめるパーヴェル ネルセシアンの演奏は札幌で何度か聴いていました。いずれもディナミークの広さと音色の豊富さが際立つテクニックと音楽に対する多方面からのアプローチが感じられる演奏だったのですが、初めて聴いたとき(2001年)の圧倒的なプロコフィエフソナタ以来 プログラムにロシアものがほとんど入っていないのを残念に思ってきました。

 この人のロシアものをもっとたくさん聴いてみたい…

 そんなとき 彼が今年も来るということを知りました。
 プログラムはチャイコフスキーの「四季」、ベートーヴェンの「ソナタ第32番」、スクリャービンの「ソナタ第10番」、「2つの舞曲」「炎に向かって」。しかも何か所か公演があるうち スクリャービンが入っているのはこの日だけです。

 これはもう行くしかない…土曜日だったのはラッキーでしたね…すぐにチケットを頼み、航空券を手配しました。

 そして一昨日 期待していたスクリャービンは私が今まで聴いた中で一番のものだったと思いました。2001年 モスクワでスクリャービン博物館に行ったとき 「法悦の詩」をさまざまな色で表したビデオを見たのですが、あのとき見た色のうねりが頭の中によみがえってきて、演奏が終わったあともしばらく夢の中にいるような感覚が続きました…

 終演後 楽屋へ。彼に直接会ったのは 10年前の札幌公演でお花を渡したときたった1回きりだったのですが、彼は私の顔を覚えていてくれました。最初はいつどこで会ったかわからなかったようでしたが、「札幌から」と私が言うとはっきり思い出してくれたようです。しかも「あなたはウラーノワ(20世紀ロシアの大バレリーナ 1910-1998)に似てる」などという嬉しいコメントも…
 その後のバレエのレッスンで私が俄然張り切ってしまったことは言うまでもありません…
 
 今年10月には彼は札幌に来るそうです。(さすがにスクリャービンは入らないだろうけど…)「必ず行きます」と言って楽屋を後にしました。