ピアノのある部屋から

ピアニスト、中添由美子がピアノのこと、教室のレッスンのこと、ロシアのこと、その他日々のいろいろを書き綴ります。

ハチャトゥリヤン

 女子フィギュアスケートの日本の第一人者 浅田真央選手が「仮面舞踏会」の曲をプログラムに使用したことで一気に知名度が高まった作曲家ハチャトゥリヤン(1903~1978)、私は彼の作品が以前から大好きで、3年前ロシアの有名バレエ用品メーカー「グリシコ」のモスクワ本店で本人が指揮をしたバレエ音楽スパルタクス(ロシア語ではスパルターク)」と「ガヤネー」の入ったCDを買ってよく聴いていました。
 今日 生徒さんの楽譜を買いに久しぶりに札幌で楽譜屋さんへ行ったら、CDの棚に「仮面舞踏会 ハチャトゥリヤン自作自演集」を見つけました。入っているのは「仮面舞踏会」「ヴァイオリン協奏曲(独奏 オイストラフ)」「ガヤネー」、前に買ったものは1976年の録音でしたが、これはずっと古くて1954年。

 「仮面舞踏会」は浅田選手の演技をテレビで見たときに何度も聴きましたし、去年はこの曲に取り組んだ生徒さんが何人かいたので指導もしましたが、作曲者本人が指揮したものはどんな感じなんだろう…と思い、買ってみました。
 
 この曲はとても激しく情熱的なところが強調されがちで、昨年私もそのように指導をした記憶があるのですが…

 意外にも作曲者本人の指揮した演奏は私が思っていたよりシンプルな感じ…なのに どことなく哀しさがにじみ出てきて聴く者の胸に迫ってきます。

 何ともすべての楽器の声部が計算されつくした凄みを感じさせる演奏…

 しまった!これを聴いてから指導すればよかった…と思うほどズッシリきました。これからこの曲に取り組む人にはまた違った観点からの指導ができそうです。

 ハチャトゥリヤンという人はグルジアトビリシ生まれなのですが、この苗字はアルメニアの苗字です。いずれも旧ソヴィエト連邦の中にあった国々ですが、このあたりは長い間 まわりの大国の侵略にさらされた辛い歴史を秘めた国々…このCDを聴いて感じたそこはかとなく漂ってくる哀しさは そういうところから来ているのではないか、と痛切に感じました。