ピアノのある部屋から

ピアニスト、中添由美子がピアノのこと、教室のレッスンのこと、ロシアのこと、その他日々のいろいろを書き綴ります。

春の祭典

 5月6日の八王子、いちょうホールでのデュオリサイタルの後半は、ストラヴィンスキーバレエ音楽春の祭典」、作曲者自身が2台ピアノ用に編曲したものを演奏いたします。
 この数年「ペトルーシュカ」「兵士の物語」、そして昨年この「春の祭典」を抜粋で演奏しました。ストラヴィンスキーの複雑な和声や拍子に強く惹かれていた私は、ぜひこの「春の祭典」を全曲弾いてみたいとかねてから思っていました。

 1913年に誕生したこの作品は、音楽も振付もその斬新さで大変なセンセーションを巻き起こしたと言われています。そのとおり、従来の古典バレエによくあるおとぎ話や恋物語とはかけ離れたストーリーです。
 舞台は原始時代のロシア…春の神の怒りを鎮めるために一人の女性がいけにえとして捧げられます。
 いけにえを捧げる風習は世界各地にあったようです。それは女性であったり、少年であったり、動物であったりしたようですが、いずれにしても残酷に殺されることは同じで、この曲の中にもその恐怖、苦しみをあらわす場面が多く出てきます。ストラヴィンスキーの複雑なリズムや不協和音は、練習していてもはっと心臓をつかまれるような気持ちになることがよくあります。

 バレエの動画は、
   ニジンスキー版(初演のときの振付) マリンスキー劇場バレエ 
   ピナ・バウシュ版 イングリッシュ・ナショナルバレエ 
   ウヴェ・ショルツ版 ライプツィヒ バレエ
   ベジャール版 ベジャール・バレエ ローザンヌ
の4つを観ました。その他に昨年、現代舞踊協会が上演した舞台も彩の国さいたま芸術劇場で観ました。
 これだけ個性的な作品なので、版による振付の違いも大きく、何をどう解釈しても良いのかとさえ思えました。中心となるのはやはりいけにえの苦しみ、でもそれだけではなく、どことなく漂う官能、そしてその先の死…ピアノ2台だけでこの世界をどのように表現していくかは非常に難しく、多分本番直前まで試行錯誤を繰り返すことになるのでしょう。
 個人的にはピナ・バウシュ版が好きでした。かなり前のバレエ雑誌で見たパリ、オペラ座のミテキ・クドーのいけにえ役の写真が忘れられなかったからかも知れません。また、ウヴェ・ショルツ版でいけにえ役を演じた日本人ダンサー、木村規予香の身体からほとばしるエネルギーも凄かった。

 オーケストラのみの演奏では、メータ(指揮)ロサンゼルスフィルとゲルギエフ(指揮)マリンスキー劇場管弦楽団の2つを聴きました。いろいろな楽器が交錯するオーケストラ版はとても色彩豊かです。オーケストラスコアを見ながら聴いていると凄くワクワクします。何とかピアノ2台でこの色彩感を表現していきたい。

 あと2週間、頑張ります。

 コンサートの詳細は、こちらです。

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