ピアノのある部屋から

ピアニスト、中添由美子がピアノのこと、教室のレッスンのこと、ロシアのこと、その他日々のいろいろを書き綴ります。

現代舞踊名作劇場

イメージ 1

 3月24日に彩の国さいたま芸術劇場で「現代舞踊名作劇場」を観てきました。
 前半は「-体ー(たい)」(振付、石井みどり、音楽、ストラヴィンスキー春の祭典」)、後半は「プロメテの火ー全景ー」(振付、江口隆哉・宮操子、音楽、伊福部昭)の2本立てです。
 この公演は、いつも東京にいるときに行っているバレエスタジオでチラシを見て知りました。ちょうど4月30日に2台ピアノで演奏する「春の祭典」の音楽を使うのと、主演がそのスタジオにときどき教えに来る酒井はな先生だったので、彼女はどのようにストラヴィンスキーを表現するのだろうと俄然興味がわきました。また、現代舞踊を観るのも初めてだったので、とても楽しみでした。

 「春の祭典」というと通常「生贄」が登場することが多いのですが、この作品はその生贄を置かず、あくまで「自然礼賛」「人間賛歌」を軸に作られているとのことでした。
 どちらかというと音楽と踊りが調和した抽象的でナチュラルな美しさ、という印象を受けました。どの曲でどんなストーリーというのは書かれていません。観る人が自由に感じ取って良いのでしょう。4月にこの曲を演奏するにあたってまず複雑な変拍子に苦労していた私は、この曲がこんなに自然に表現できるものかと感じ、また演奏するときもこのように自然に体に入っていくようにしなければならないと感じました。
 はな先生はやはり美しかったですね。レッスンのときもいつも見る人を圧倒する美しさでときどきこちらが振りを忘れてしまうほどなのですが、すぐれた舞踊家はどのような作品でも自由自在に表現できるものなのだなあ、と感じました。

 後半の「プロメテの火」はギリシャ神話のプロメテウスの話を題材にしたもの。こちらはストーリーがあって、ドラマティックに話が進んでいきました。主人公プロメテ(佐々木大)が火を盗んだ罪でコーカサスの岩山に縛られ、黒鷲に肉をついばまれる場面などは真に迫っていてはらはらするほどでした。
 また、この作品ではカーテンコールのときにダンサーがまったく動かず、作品が終わったときのままの姿勢でいるのですが、これがさらにこの作品を印象深いものにしていたのではないかと感じました。

 今までよく観ていたクラシックバレエとはまた違う踊りで、私には初めてのことばかりだったのですが、とても楽しめ、また現代舞踊を観に来たいと思いました。札幌ではあまり観る機会がなさそうなので、東京に来たときに可能な限り劇場に足を運びたいです。