ピアノのある部屋から

ピアニスト、中添由美子がピアノのこと、教室のレッスンのこと、ロシアのこと、その他日々のいろいろを書き綴ります。

ショスタコーヴィチ

 5月26日のリサイタルまであと2週間を切りました。ここからは体力との闘いになってきます。北海道は今、花粉シーズンの真っただ中ですが、何とか踏ん張って乗り切りたいと思っています。

 これから少しずつリサイタルで弾く曲を取り上げてみたいと思います。今回初めてショスタコーヴィチの「前奏曲とフーガ」をプログラムに入れました。
 ピアノを習ったことのある方ならバッハに「平均律ピアノ曲集」という作品があることを聞いたことがあるのではないかと思います。このショスタコーヴィチの「前奏曲とフーガ」はバッハの平均律と同じように24の調で書かれた24曲からなり、それぞれ前奏曲とフーガの2曲からなっています。

 最近、特にフーガを勉強するのが楽しくて、この作品をプログラムに入れました。実は学生時代、バッハのフーガは「試験に出るからしかたなくやるもの」と言えるほど嫌いでした。それが長年勉強を続けているうちにいろいろな高さのところでメロディーが出てくる曲が面白いと感じるようになりました。決定的なきっかけは3年前の右手の怪我で、あのとき数か月左手だけで表現することを余儀なくされて、私の耳が決定的に変わったと思えます。

 今回演奏するのは「第4番 ホ短調」です。このフーガは基本的に4声ですが、バッハのフーガにとても強い影響を受けているのがわかります。
 また、そこまでわからなくても、同じメロディーが調を変えて高いところや低いところに出てくるのを聴いて頂けたら、と思っています。

 一昨年、ボストンで師匠のネルセシアンにバッハのレッスンを受けたとき、同じテーマでもただ強く出すだけではなく、さまざまな音色で弾くことが必要だと言われました。彼の音色のパレットは実に豊かで、自分も少しでも音の色の種類を増やしたいと思ったものです。
 その思いが26日に結実すると嬉しいです。