ピアノのある部屋から

ピアニスト、中添由美子がピアノのこと、教室のレッスンのこと、ロシアのこと、その他日々のいろいろを書き綴ります。

バッハ インヴェンション指導法講座

 先月末、黒川好子先生の「バッハ インヴェンションの指導法講座」に行って来ました。
 バッハをはじめとするポリフォニー作品の演奏や指導法については、正直迷っていたところがありました。学生時代から卒業してすぐの頃はよくバッハを弾いていましたが、近年はロシア音楽を演奏することが多く、なかなかバッハをじっくり勉強する機会がありませんでした。
 生徒さんのコンクールや試験の課題に必ずバッハが出るのに、自分が何も進歩していないのはまずいと思い、昨年ボストンにパーヴェル・ネルセシアンのレッスンを受けに行ったときに、バッハの平均律2曲とフランス組曲をプログラムに入れました。
 レッスンはとても充実したもので、バッハのフーガ、舞曲についてたくさん新しいことを吸収できたのですが、フーガに入る前のインヴェンションの指導法については自分の中で今一つ決定打に欠けている感じがしていました。インヴェンションを学ぶ人たちの中にはピアノを始めて日が浅い子供たちも含まれます。大人の方はある程度理論を説明していますが、特にまだ年端の行かない子供たちにインヴェンションに入る前の段階を含めてどのようにポリフォニーを教えて行ったら良いのか勉強したいと思っていました。
 
 実際、かなりエチュードが進んだ人でもバッハが嫌いという人をときどき見かけます。実は私もかつてそうだったのです。子供の頃あまりにもバッハの出来が悪かったので、ほとんど終わっていたインヴェンションをもう一回初めからやり直しましょうと先生に言われたときは、私はすっかりやる気をなくしてしまい、バッハが嫌いになってしまいました。友達が次々と平均律に入る中で自分だけがインヴェンションを初めからやることは当時の私にとっては耐えがたいことでした。その大切さがわかったのはずっと後になってからで、以後もずっとバッハは「試験に出るから仕方なくやるもの」だったのです。(教室のレッスンである教材をもう一度やり直した方が良いと思ったときは、できるだけ同レヴェルの他の本を使うようにしています)
 そんな感じでいやいや勉強していたインヴェンションは平均律に入るとすっかりご無沙汰になってしまいます。(今ではバッハは私の大好きなレパートリーになっているのですが)これでは良い指導ができるわけがないと思いました。

 秋のコンサートラッシュが一段落した11月の終わり、これはチャンスだと思い、チケットを申込みました。
 黒川先生の著作「究極の練習法シリーズ」と使ってみっちり2時間、テーマのとらえ方、装飾音、日本人の手に合う効果的な指使いなど、練習の進め方を非常にわかりやすく解説してありました。今まで知らなかったことがたくさんあり、目から鱗の2時間でした。この本に書いてあることをそのままうちの生徒さんに使うことができない場合もありますので、自分の中でよく噛み砕いて必要なときに必要なことが出てくるようにしたいと考えています。

 演奏のスケジュールに追われるとなかなか指導法の講座に行けないことも多いのですが、できる限り顔を出したいですね。普段一人で教えているので、井の中の蛙にならないようこのような講座を活用していきたいと思います。