ピアノのある部屋から

ピアニスト、中添由美子がピアノのこと、教室のレッスンのこと、ロシアのこと、その他日々のいろいろを書き綴ります。

基礎練習

 ピアノでよく使われる基礎練習の本は「ハノン」「ピアノのテクニック」「ピシュナ」などがあります。そしてピアニストはこれらの本に載っている基礎練習は毎日やるのが望ましい、というようなことが書いてあります。
 
 ピアニストやピアノ教師の方、またこの道を目指す方、このような基礎練習を毎日やりますか?

 結果は人によってさまざまのようです。世界第一級のピアニストでも「毎日欠かさずやる」という人もいれば「一切やらない。自分には必要ないし、生徒にも勧めない」という人もいます。
 またハノンやピシュナなどの純粋に指の訓練的なものではなくてショパンブラームスなどの練習曲を毎日弾く人もいます。
 これはやはり自分がついた先生の影響によるものが大きいようです。
 
 私自身は基本的に毎日やる派です。学生時代、他の人に比べて指が弱かった私は常に自分はテクニックがないというコンプレックスを持っていました。しかも指の関節の付き方が緩く、関節はいつもクニャクニャしていました。エチュードの試験などは現に恐怖だったのですが、そんなとき先生に「毎日スケールとアルペジオを全調やりなさい」と言われたのが毎日弾くようになったきっかけだったと思います。
 以来30年、現在はスケールやアルペジオの他にこのとき教えて頂いた5,4指の訓練なども取り入れています。レッスンが詰まっていて時間のないときでもこれだけやっておけば大丈夫という安心感があるものになっています。
 
 この先生のところには現在も通っているのですが、先生は筋金入りの毎日やる派…現在もスケールやアルペジオの他にハノンの中からも毎日ピックアップして弾いているそうです。
 現在、先生が80才近くなっても現役を保っているのを見ると、このやり方は正しかったのだと思えます。また、3年前に先生が奥様を亡くされて悲嘆のどん底にあったときもこの習慣が救いになったのだそうです。
 今後も私は先生の背中を見ながらこれらの練習を続けていくでしょう。年を重ねるごとに筋力は落ち、若い頃のように無理はきかなくなります。病気や怪我でピアノが弾けなかったとき、手のまわりの筋肉(もしかしたらそれ以外も)はみるみる落ちました。やはりピアノを弾くには訓練された手が必要です。
 基礎練習など一切しなくても高度なテクニックが保てる人は別として自分にはこれは不可欠なのだろうと思えます。

 年齢に合った筋肉の鍛え方をして、私もできるだけ長く弾いていきたいと思っています。