ピアノのある部屋から

ピアニスト、中添由美子がピアノのこと、教室のレッスンのこと、ロシアのこと、その他日々のいろいろを書き綴ります。

パーヴェル・ネルセシアン ピアノリサイタル(8月9日、カワイ表参道パウゼ)

 毎年、表参道のカワイで開催されている「ロシアン・ピアノスクールin東京」、今年は8月8日(初日)のパーヴェル・ネルセシアンのレッスンと翌9日の彼のリサイタル、そして10日に行われた彼の師匠、セルゲイ・ドレンスキー教授のレクチャーを聴きました。

 今年の彼のリサイタルのプログラムはオールベートーヴェン
     ソナタ第2番 作品2-2
     32のヴァリエーション
     ソナタ第14番 作品27-2「月光」
 コンクールや学校の試験でもよく取り上げられる曲で、私自身も高校、大学時代にこれらをすべて勉強しました。そのときはただ試験で弾くから、という感じでどの曲もあまり好きになれなかったのを覚えています。
 そのベートーヴェンがこんなに表情豊かで魅力的だったのかと感じられる演奏でした。
 特に印象に残ったのは最初の2番、この曲がコンサートに登場することはあまり多くはありません。それは同じベートーヴェンの中、後期の作品や名前のついているソナタ(「悲愴」「熱情」など)に比べて音楽的魅力が少ないからではないかと私はずっと思っていましたが、決してそんなことはないのだということを痛いほど感じました。
 
 「どんなパッセージでもその中に音楽を感じなさい」とレッスンのときに彼に言われたことがあります。特に私はテクニックが難しいパッセージではどうしても音楽を感じることなく、そこを弾きこなすのに精一杯になってしまうことがよくありました。
 今年の1月に聴いたときよりも(あのときは舞台裏で聴いていましたが)更に随所に工夫がこらされ、進化したと感じられるコンサートでした。この先、彼がどのように進化していくのか、ますます目(耳)が離せなくなりそうです。