ピアノのある部屋から

ピアニスト、中添由美子がピアノのこと、教室のレッスンのこと、ロシアのこと、その他日々のいろいろを書き綴ります。

「セルゲイ・ドレンスキーの誕生日に」追悼コンサート(12月3日、モスクワ音楽院大ホール)

 今年の2月に亡くなったロシア、ピアノ界の偉大な教授、セルゲイ・ドレンスキーの追悼コンサートが89回目の誕生日に当たる3日、モスクワ音楽院大ホールで行われました。

 世界中で活躍する綺羅星のごとき門下生達の中からフィリップ・カパチェフスキー、アンドレイ・ピーサレフ、パーヴェル・ネルセシアン、ニコライ・ルガンスキーの4人が出演しました。

 

 開演はモスクワ時間の19時開演だったので日本時間では4日午前1時、ライブ配信があるだろうとは思っていたのですが、今週は週明けからとても忙しかったので、ライブで聴くのを諦め、後でアーカイブを探そうと思って早く休みました。

 しかし、夜中に目が覚め、何気なくスマホを開けてみると、ちょうどライブ配信の真っ最中…一気に目が覚め、聴き入ってしまいました…

 

 私の師匠、パーヴェル・ネルセシアンが第2部の初めに出演しました。

 プログラムは、

   グリンカ:別れ

        マズルカの思い出

   ショパン:4つのマズルカ 作品67

   マーラー:アダージェット(交響曲第5番より、ジンガー編曲)

 


В День рождения Сергея Леонидовича Доренского. Часть 2

 

 メールはよくやり取りしていて元気だということはわかっていたのですが、髪の毛が真っ白になっていて、とても年をとってしまったように見え、少なからず驚きました。舞台に登場して挨拶をしてた後、ドレンスキーの写真に深々とお辞儀をする姿がとても印象的で、改めて師に対する深い尊敬の念が感じられました。

 彼のプログラム構成はいつも何か物語を感じさせるものなのですが、このプログラムはいつもにも増して印象的に思えます。

「別れ」から始まって、最後の「アダージェット」は「祈り」を思わせるものでした。師との別れだけではなく、コロナ禍で多くの命が失われている現代の世界に対する深い悲しみが迫ってくるように感じられ、圧巻の演奏でした。

 

 自分は今まで何をしてきたのだろう…

 今年、私自身のピアニストとしての歩みはほとんど止まってしまっていました。コロナ禍で今まで経験しなかったことに追われ、常に不安定な精神状態で走ってきたような気がします。

 「今のような時代にこそ、その人の本性が見える」ということを何かで読んだことがありました。今まで信じてきたことも、積み上げてきたことも根こそぎひっくり返されてしまうような今の時代、そこにはまさに音楽に対する揺るぎない姿勢がありました。改めて凄いと思いました。

 

 会場のモスクワ音楽院大ホールはソーシャルディスタンスなどはしていないようでした。大半の人はマスクをしていましたが、中にはマスクを口の下まで下げている人も…きっちり座席の間を空けている日本のコンサートホールを見慣れていると、この先ここで感染者が増えなければ良いが、と懸念してしまいます…