ピアノのある部屋から

ピアニスト、中添由美子がピアノのこと、教室のレッスンのこと、ロシアのこと、その他日々のいろいろを書き綴ります。

セルゲイ・ドレンスキー生誕90年コンサート(12月3日、モスクワ音楽院大ホール)

 昨年亡くなったロシアピアノ界の偉大な指導者、セルゲイ・ドレンスキーの生誕90年のコンサートが、モスクワ音楽院大ホールで行われました。

 ドレンスキーの誕生日当日の12月3日は、現在世界中で活躍するトップクラスの教え子が一堂に会してピアノ協奏曲を披露するという豪華なコンサートです。

 私のロシアの師匠、パーヴェル・ネルセシアンも出演して、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番を弾きました。その他の出演者は、

  アンドレイ・ピーサレフ

  エカテリーナ・メチェーチナ

  ニコライ・ルガンスキー

  デニス・マツーエフ

  ワジム・ルデンコ

  アレクサンドル・シュタルクマン

 門下の中で今もっとも輝いているいる7人と言えるでしょう。

 当日の動画です。動画の説明のところのロシア語の下に英語のプログラムがあります。


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 5年前、85才の誕生日のときは時差6時間の日本から真夜中に夢中になってライブを聴いたのですが、今回は翌日朝が早かったのでライブは諦め、朝5時半頃目ざめてスマホにかじりついてまずパーヴェルの演奏を先に聴き、その後毎朝聴いているロシア語ニュースをサボって、順番に聴いていきました。

 

 まずパーヴェルのチャイコフスキー、この曲は私自身が彼のレッスンを受けたことがあります。そのときにとかく技術を追い求めがちになるこの曲でもっとも必要なのは、ひとつの物語を紡いでいくように曲を作っていくことだと言われたのを覚えています。あのとき彼が言っていた通り、聴く人が物語を思い浮かべるような詩的な演奏だったと思いました。

 

 トップバッターとして登場したピーサレフのモーツァルトの20番の協奏曲は本当に美しかった…どちらかと言えば淡々とした中に深い悲しみが漂っているようで、心を奪われました。

 

 ルガンスキーは手の怪我のため10月のコンサートをすべてキャンセルしたという情報が入っていたので気になっていたのですが、すっかり回復していたようでした。しかし、演奏が終わって指揮者のアナトーリ・レービンに挨拶をしたときの笑顔がとびきり明るかったので、もしかしたら緊張していたのかも知れません。

 

 最後に登場したマツーエフのジャズの即興入りの「ラプソディ・イン・ブルー」(ガーシュイン)も大変面白かった…あのモスクワ音楽院大ホールでジャズが響くのは少し不思議な感じがしましたが、彼の個性が存分に発揮されたものだったと感じました。

 

 舞台上にはドレンスキーの大きな写真が飾られ、演奏が終わった出演者は受け取ったお花を先生のところに持って行って置いていました。門下生が皆、先生のことが大好きで、心から尊敬している様子がうかがえました。

 

 このコンサートとは別に11月30日、若い世代の門下生による協奏曲のコンサートもYouTubeに上がっています。こちらはカパチェフスキー、エメリヤーノフ(2019年チャイコフスキーコンクールの入賞者)などの門下生の中で最も若い人達の演奏です。こちらも大変聴きごたえがあります。


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