ピアノのある部屋から

ピアニスト、中添由美子がピアノのこと、教室のレッスンのこと、ロシアのこと、その他日々のいろいろを書き綴ります。

釧路芸術館

 先週末 母校、国立音楽大学の北海道同調会定期演奏会に出演するため釧路へ行ってきました。
 会場は北海道立釧路芸術館アートホール。2007年5月ここで「舞台芸術の世界展」が開催されていたとき、企画の一環としてここで「ロシアピアニズムとロシアバレエ」と題したリサイタルを開催させて頂きました。

 実はこの2007年の記憶は私の中で最もつらかった演奏会の記憶なのです。

 2007年夏から2009年末まで体調を崩してすべての演奏活動を休止しなければならなかったのですが、すでにこのとき手の関節が腫れて痛んできていました。
 ソロリサイタルの上、かなりハードなプログラムで(確かディアギレフのロシアバレエ展の関係でペトルーシュカが入っていました)私は持てる力を振り絞って本番に臨みました。
 本番はすさまじい痛みとの闘いでした。手が痛いということがお客様や主催者の方々に知られなかったのがせめてもの幸いでした。
 客席には 医師である父が痛み止めの錠剤と貼り薬を持って待機していました。何とか本番は使わずに済みましたが、演奏後の痛みは耐え難く、主催者の方に送り出されて列車に乗った途端に痛み止めを飲んだのを覚えています。
 そのときから2010年の春まで私は舞台に出ることができませんでした。

 その釧路芸術館アートホールで6年ぶりに弾くことができました。

 あのときの記憶は何一つ残っていませんでした。どんなピアノだったのか、どんな響きだったのかも全く覚えていなかったのです。ただ またここに戻って来れたという感慨深い気持ちだけで私はあのときと同じ舞台に出て行きました。そして こうして移動して弾いて歩くのが自分には一番幸せなんだと強く思いました。

 両親と法事で東京から来ていた叔父夫婦が札幌からかけつけてくれました。(一人で運転してきた父はさすがに大変だったそうです)
 その晩 釧路にもう1泊して、翌日は私が運転して札幌に戻りました。約340キロ…ヘロヘロでした。まだ右手右足が筋肉痛です…

 猛暑にあえぐ日本列島が嘘のように釧路は涼しかった…JRで釧路駅に着いたときは18度…