ピアノのある部屋から

ピアニスト、中添由美子がピアノのこと、教室のレッスンのこと、ロシアのこと、その他日々のいろいろを書き綴ります。

パーヴェル・ネルセシアン ピアノリサイタル(10月22日、東京文化会館)

 ほぼ一年ぶりに彼の演奏を聴くことができました。8月に来日したときはどうしても行けなかったので、この日を心待ちにしていました。
 プログラムは前半が

      グラナドス  ロマンティックな情景
      アルベニス  組曲「イベリア」より
              アルメリア
              エル アルバイシン
              セビリアの聖体祭

というスペインもの、後半がオペラからのトランスクリプションで、

      ヴェルディ=リスト 「アイーダ」より 巫女たちの踊りと終曲の二重唱
      ワーグナー=リスト 「トリスタンとイゾルデ」より イゾルデの愛の死
      ヴェルディ=リスト リゴレット パラフレーズ
      ワーグナー=リスト タンホイザー序曲

 彼のスペインの作品を聴くのは初めてだったので とても楽しみにしていたのですが、際立っていたのはまず卓越したリズム感とセンスでした。今まで何度か彼のレッスンを受ける機会があって、そのときにバレエの話がよく出てきました。(「ロメオとジュリエット」の時は振付にまで話が及びました)バレエを長年習っていた私は(現在は腰を傷めて休んでいますが)スペイン舞踊にもとても興味があるのですが、聴いていて踊りの場面が浮かんでくるようなところが随所にみられました。
 
 そして後半のオペラ作品…オペラはソロ、合唱、そしてオーケストラと様々な音が合わさってできていますが、それを見事に一台のピアノで弾き分けていたと感じました。多彩な音色に更に磨きがかかり、特にピアニッシモの美しさが絶品…私が特に印象に残ったのはやはり「イゾルデの愛の死」、その晩一晩中この曲が頭の中で鳴りました。

 今年 札幌での彼のコンサートがないのは残念な限りです。昨年のコンサートに行ったうちの生徒さんからも彼のコンサートはないのかとよく聞かれます。また彼の演奏が札幌でも聴ける日を私も心待ちにしています。