ピアノのある部屋から

ピアニスト、中添由美子がピアノのこと、教室のレッスンのこと、ロシアのこと、その他日々のいろいろを書き綴ります。

身分証明書を…

 嘉門達夫の「小市民2」という歌の中にこんな歌詞があります。(私はこの歌が大好きで自分のiPhoneに3曲も小市民の歌が入っている)
 
 ♪ おまわりさんとすれ違うとき悪いことしていないのにキンチョウしてしまう…

 私は 日本ではおまわりさんに会っても別に緊張しませんが、ロシアではそうはいかないのです。

 ロシアのオマワリはコワイ…
 まず 何と言ってもガタイがデカイ…ロシアでは自分の体が小さいことを痛切に感じる私には何とも言えない圧迫感です…
 その圧迫感のあるロシアオマワリがつかつかと私の方にやって来たときは必ずこう言われます。
 「ドクメント ヴァーシ パジャールスタ」(身分証明書を見せて下さい)
 外国人はパスポートを見せれば良いわけですが、ここでパスポートを携帯していないと罰金ということになり、外出するときは必ず持ち歩かなければなりません。
 真っ当なヴィザで入国していてやましいことは何もないのに何で緊張してしまうのだろう…

 私の場合 パスポートの提示を求められたのは今まで4回。4回ともモスクワ市内で、2回は地下鉄の駅、1回は公園でお昼を食べているときでした。もちろんパスポートを見せれば大丈夫だったのですが、とても恐ろしかったのを覚えています。地下鉄駅での最初のときはピアノのレッスンに行っていたモスクワ音楽院附属アカデミーの副学長(当時)が一緒で、とっさに「彼女は私の学校の生徒だ」と言ってくれてそれで解放されました。

 あとの1回は初めてロシアに行ったとき(1995年)…まだロシア語も全く話せないときに究極の体験をしたのです。
 宿泊していたインツーリストホテル(今は超高級ホテル リッツ カールトンに生まれ変わっています)の前で身の丈2メートルはあるかと思われるオマワリさんにパスポ-トを出すように言われました。このときはホテルカードも出すように求められ、なぜこんなに厳重なのかわからず、部屋に戻ってからも恐ろしさでただ茫然…水も買いに行けなくなってしまいました。

 コノヤロー!娼婦と間違えやがって…

 わけがわかって怒り狂ったのはかなり後になってから…当時インツーリストホテルのまわりには外国人客目当ての娼婦がたくさんいました。どうやらそれは違法だったようで、それをチェックするために警官がいたようです。10月の雪降るモスクワで薄着の上にショールだけをはおっていた私はお金のために客を取っている女だと思われたのです。(彼らにとってはガイジンの女の素性なんてわかりませんよね)
 言葉がわからないということは何と哀しいことだろう…そう思ってそのあと習い始めたロシア語は、16年たった今も続いています…