ピアノのある部屋から

ピアニスト、中添由美子がピアノのこと、教室のレッスンのこと、ロシアのこと、その他日々のいろいろを書き綴ります。

キエフ バレエ くるみ割り人形

 クリスマス気分が盛り上がってきた12月20日 キエフ シェフチェンコ劇場バレエ「くるみ割り人形」を観に行ってきました。

 このバレエ団の本拠地は ウクライナキエフにあり、ソヴィエト連邦が崩壊するまでは「ソヴィエト3大バレエ」の一つと言われたところです。私も 子どもの頃から名前は知っていましたが、実際に観るのは今回が初めてです。

 主役クララにはおなじみのプリマ エレーナ フィリピエワ。ダンサーとしてはすでにヴェテランといえる年齢であるはずの彼女ですが、クリスマスの夜に夢を見る少女の雰囲気にぴったり、若手をしのぐテクニックもさることながら、卓越した演じる力で観る者を圧倒しました。
 普通「くるみ割り人形」にはクララは子役が演じ 女性の主役は金平糖の精として登場するものと、クララが最初から最後まで主役が演じるものと二つのバージョンがあるのですが、このバレエ団は後者で フィリピエワの魅力を余すところなく伝えるものになっていました。

 相手役のシドルスキーをはじめ 他のメンバーは若手が中心でほとんど名前を知っている人がいなかったのですが、皆 本当に素晴らしく、特に2幕の各国の踊りはそれぞれの国の個性が際立つ見ごたえのあるものになっていました。
 ソヴィエトから独立して以来 ウクライナは国として厳しい時代を過ごしてきたことは報道されてきたとおりですが、それだけにダンサーの国外への移籍も多く、またそのことが若手ダンサーに大きな舞台に出る機会を与え、優秀な若手が続々育ってきたのだと感じました。

 また 私が子どもの頃に憧れたプリマ リュドミーラ スモルガチョワが今回ミストレスとしてこの公演に同行し、指導にあたっていたようです。ここでも伝統をしっかりと次世代に伝えることができているのですね。