ピアノのある部屋から

ピアニスト、中添由美子がピアノのこと、教室のレッスンのこと、ロシアのこと、その他日々のいろいろを書き綴ります。

若い音楽家のためのコンクール「くるみ割り人形」

 最近は、日本に居ながら世界各国のテレビ番組をインターネットで観ることができます。私が楽しみに観ているロシアの番組で「くるみ割り人形」という名前の若い音楽家のためのコンクールがあります。ピアノ、弦楽器、管打楽器の3つの部門で2回の予選を勝ち抜いた子供たちがオーケストラと協奏曲を協演します。自分の演奏の勉強にもなるし、この子が自分のところにレッスンに来たらどう教えるだろうか、と考えることによって教える方の勉強にもなるし、その上ロシア語のヒヤリングも鍛えることができるお得な番組なのです。

 毎年このコンクールは11月下旬から12月にかけて行われます。昨年行われたコンクールもYouTubeで配信され、1次予選から全部観ていました。2015年のチャイコフスキーコンクールのピアノ部門の覇者で、札幌のPMFで演奏したこともあるドミートリー・マスレーエフが審査員をつとめていました。

 

 今朝、過去のこのコンクールの動画が流れて来たので観ていると、昨年のチャイコフスキーコンクールの覇者、セルゲイ・ダヴィドチェンコの12才のときの演奏が出てきました。実に堂々とプロコフィエフのピアノ協奏曲第3番の第1楽章を演奏し、1位になりました(この動画の最初の方です)


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 昨年のチャイコフスキーコンクールでは彼の演奏のスケールの大きさ、そして何よりもタッチの柔らかさに驚嘆し、この人を応援しようと決めました。ロシアのウクライナ侵攻によって西側諸国の参加者がごくわずかだったり(日本人の参加者も2人だけでした)といろいろあった昨年のコンクールですが、この結果は妥当なものだったと私は思います。

 こちらは昨年のチャイコフスキーコンクールの2次予選でのダヴィドチェンコ。


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 もしウクライナ侵攻が起こっていなければ、この人ももっと世界各国で活躍していたことでしょう(確か日本にもまだ来ていないはずです)。今どうしているのかはあまり情報が入って来ないのですが、まだ若いので、これから活躍の場が広がっていくことを心から願っています。

 

 有史以来、常に芸術は政治に翻弄されてきたのでしょう。若い音楽家が存分に力を発揮し、活躍できる平和な世の中が一日も早く実現して欲しいと願う毎日です。