ピアノのある部屋から

ピアニスト、中添由美子がピアノのこと、教室のレッスンのこと、ロシアのこと、その他日々のいろいろを書き綴ります。

チャイコフスキーコンクール3(最終回)

 前回の続き。

 前回ファイナリスト6人、と書いたのに、ハリトーノフのことを書いていませんでした。
 最年少の16才、まだモスクワ音楽院附属中央音楽学校に在学中で音楽院にも入学していない若さ。一次予選のときから話題になっていましたので、ファイナルを聴きました。私の印象では、あの若さであの完成度は凄いと思いましたが、まだチャイコフスキーのコンチェルトは音楽的な作りが幼く感じられるところがありました。まだまだ伸びしろがたくさん、という感じなので、今後が本当に楽しみですね。

 
 あとファイナルには進めなかったけど、ミハイル・トゥルパーノフのメシアン、マリア・マゾのモーツァルトのコンチェルト、イリヤ・ラシュコフスキーのチャイコフスキーの「松雪草」そして2次予選に残れなかった人の中ではアンドレイ・コロベイニコフの「ラ・カンパネラ」がとても印象に残っています。
 毎日聴きまくっていたので、スマホの充電が大変でした。うちではスマホをテレビに繋ぐのが一番音も画面も良いのですが、さすがにすぐ電池が尽きて一日3回充電したときもありました。充電中はPCとタブレットをフル回転というわけです。

 それでもまだ全員の演奏を聴いたわけではありませんので、これからゆっくりアーカイブを楽しみたいとい思います。

 今までコンクールのライブ中継をこんなにたくさん聴いたことはありませんでした。怪我で演奏活動を休んでいる今だからこそできたのかも知れません。本当はそれではいけないのだけど、なかなか他の人の演奏をじっくり聴く時間がないのが現実でした。
 今回、いろいろなコンテスタント達のいろいろな曲の演奏を聴くうちに、今まで曲について気がつかなかったことに気がついたことも多々ありました。
 そして、何より大きかったのは私の中の再び弾きたいという気持ちが大きく膨らんだことでした。
 昨年自分のリサイタルでパーヴェル(ネルセシアン)と2台ピアノ共演が実現し、リサイタル後ずっと燃えつきてしまっていました。(オリンピックが終わった後の選手の気持ちがよくわかりました)怪我をしたのもやはりどこかで心身に無理がかかっていたのだと思います。
 9月から舞台に復帰しますが、やっと次の目標を見つけて、邁進して行けそうです。
 でも、10月のショパンコンクールはこんなにたくさんライブを聴くことは多分不可能でしょうね…

 コンクール期間中ずっと緊張した表情を崩さなかったファイナリスト達も、表彰式では皆、普通の若者の顔に戻っていましたね。特に舞台ではふてぶてしく見えるほどどっしり構えていて、すでに大家の風格さえ感じられたゲーニュシャス(ゲニューシャスと書いてあるものが多かったし私もそう書いていましたが、ロシア語の発音を聴いたら最初にアクセントがあるようです)はもうぬいぐるみみたいで可愛かったですよね。皆、私の息子のような年です。

 次回のチャイコフスキーコンクールは2019年かな?今度は現地で聴いてみたいですね。
しかし、この期間中にモスクワの先生方がレッスンを入れてくれるかどうかわからないし、何より自分の練習する場所を探すのがタイヘンそう…今までモスクワ音楽院の大ホールは3回行ったことがありますが、またぜひあの場所に行って聴きたいと思っています。