ピアノのある部屋から

ピアニスト、中添由美子がピアノのこと、教室のレッスンのこと、ロシアのこと、その他日々のいろいろを書き綴ります。

訃報

 先月25日 うちにずっとレッスンに通ってきている生徒さんのお父様の訃報が入りました。
 彼女は幼稚園の年中のときに私のところでピアノを始め、現在札幌市内の私立高校の音楽科の3年生です。お父様にも何度もお会いしていて、彼女を愛情を持って見守っているのを感じていました。
 留守番電話を聞いたとき、彼女は今どんな気持ちでいるだろうと思うと心が痛みました。親と送るときに何才になればあきらめられるということは決してないでしょうが、まだ17才で父親と別れなければならないのはあまりに痛切でしょう。

 ちょうどその日がお通夜で彼女のレッスン時間のところが空いたので、お参りに伺うことにしました。家を出てしまってから訃報を聞いたので喪服も何もなかったのですが(家に取りに帰るのは時間的に不可能)、たまたま黒いジャケットとパンツを着て来たので、レッスン終了後そのまま斎場に向かいました。

 1週間後の今週火曜日、彼女はあれから初めてレッスンに来ました。
 学校の前期試験と今月末の毎日こどもコンクールが迫っています。試験はちょうど葬儀の日に当たってしまって学校に追試願を出したそうですが、まずこの試験をクリアしなければ卒業できません。
 まだ葬儀から間もないのですが、何とか気持ちを立て直して試験に臨めるようにレッスンしなくてはなりません。
 「舞台に上がったらどんなつらいことがあっても決してそのことを舞台上で出してはいけない」
 学生時代から先生に言われ、繰り返し自分に言い聞かせ、生徒さんにもよく言ってきたことですが、実践するのはとても難しいことです。私も10年ほど前 父が手術をしたときにちょうど東京でのリサイタルがあり、そのときはさすがに気持ちが揺れて、集中するのがとても大変だったことを覚えています。

 やはりゆっくりていねいにさらうように指導することが良いのではないかと思いました。葬儀などでバタバタして練習する時間がないとどうしてもテクニックが落ち、気持ちも焦ります。この日は鍵盤をよくつかまえるように心がけてていねいにさらうように言いました。
 
 試験は今週中にあるそうなので、何とか集中して臨むことができれば、と願っているところです。