ピアノのある部屋から

ピアニスト、中添由美子がピアノのこと、教室のレッスンのこと、ロシアのこと、その他日々のいろいろを書き綴ります。

パーヴェル・ネルセシアン、ピアノリサイタル(YouTube)

 我が師匠、パーヴェル・ネルセシアン氏のリサイタルが12月26日、モスクワ音楽院小ホールで行われました。

 今年の8月に彼が私のリサイタルに来てくれたときに日時を聞いて、もしそれまでに戦争が終わっていれば、またあの伝統ある空間で彼の演奏を聴きに行きたいと思っていました。毎日彼のYouTubeを聴いている母も一度モスクワで彼のコンサートを聴くことを夢見ていたので、母も連れて行きたいと思っていたのですが、その願いは今年もかなわず、オンラインでの視聴となりました。

 

 今年のプログラムはオール・ショパン、昨年のモーツァルト、フランスバロック作品、プーランクのプログラムとはガラッと雰囲気の変わったプログラムです。

 ショパン

 3つのノクターン 作品15

 舟歌 作品60

 スケルツォ第4番 作品54

 アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ 作品22

 4つのマズルカ 作品67

 3つの新練習曲

 バラード第3番 作品47

 バラード第4番 作品52

 

 私が一番印象に残ったのはマズルカポロネーズ、私自身8月のリサイタルで舞曲に取り組んだとき、徹底的にリズム感のことを言われましたが、やはり見事でした。マズルカのリズムのしなやかさ…そして「アンダンテ・スピアナート…」はポロネーズのリズムを厳格に守っているのが感じられました。

 何かゆるぎないものを感じます。祖国ロシアが全世界を敵に回すようになってまもなく2年、そんな中でのモスクワでのソロリサイタルはいろいろな思いがあったでしょう。

 彼にレッスンを受けるようになって12年…今までレッスンで言われてきたこと、レッスン以外でいろいろ話したこと、彼の演奏を聴いていて感じたことなどが凝縮された1時間半だったと思います。

 

 またあの場所で聴ける日が果たして来るのだろうか…うちの母がモスクワで彼のコンサート聴くのが夢だと話すと、彼はとても喜んでいました。ただ、母は今年米寿を迎えたので、今すぐであればまだ行けるかも知れませんが、だんだん厳しくなってくるでしょう。とにかく一刻も早く戦争が終わって欲しい。来年の12月の彼のコンサート(毎年12月にモスクワでのソロリサイタルがあるようです)は母と一緒にモスクワで聴くことができますように…

 

 祈る思いで今日の仕事納めを迎えました。もう彼のレッスンについて行けないと思ったほど苦しかったこともあったのですが、来年も何とか頑張って、この偉大な師匠の背中を追いかけていけたら、と願っています。

 


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