ピアノのある部屋から

ピアニスト、中添由美子がピアノのこと、教室のレッスンのこと、ロシアのこと、その他日々のいろいろを書き綴ります。

時間の感覚

 先月左足を骨折してギブス&松葉杖生活になって、一番とまどったのは自分の中の時間の感覚だったと思います。

 多くの方が思い当たることと思いますが、特に家事をしているときは時間をいかに有効に使うかを最優先に考えてきました。洗い桶に水を貯めている間に他のことをいくつこなせるか、などなど…

 しかし、片足の自由を奪われてしまうとそんなことはできるわけもありませんでした。朝トースターの中にパンを入れたら、そのままじっと焼けるのを待ちます。急須にお湯を入れてもそのままじっと待ちます。階段はお尻をついて降り、松葉杖のないところは這って歩いていました。いろいろやろうと思っても身体が動かないわけですから、どうにもならないわけです。当然何事をするのも今までの3倍の時間がかかりましたが、あまりの不自由さにイライラする余裕さえありませんでした。

 私の中で時間の感覚が大きく変わってしまったのですが、今まで非常に忙しかったのでこんなにゆっくり時間が流れていくことは初めての経験でした。

 明日また検診に行くのですが、ギブスが取れるかどうかはあまり期待しないようにして、穏やかな気持ちで構えようと思っています。

 

 怪我をしたのは準備に心血を注いできたコンサート「舞~言葉のないロマンス」の中止が決まった一週間後でした。準備のためのロシア行きもその前に中止になっていました。コロナで多くのコンサートが中止になる中、仕方のないことだと懸命に自分に言い聞かせていましたが、やはり心に大きな穴が空いていたのでしょう。

 究極の痛さと不自由さに耐えていたときはあまり気が付かなかったのですが、今、少し良くなってみると、周到に準備を進めてきたコンサートがなくなってしまった悲しみがひたひたと湧いてきています。

 

 そして、怪我でケアを怠ったため一気に悪化した歯は(前回記事参照)、木曜日(4日)に歯の神経を抜いて、ようやく激痛から解放されました。まだ傷口が少ししみますが、順調に回復しています。反対側の歯も8年前に同じ歯医者さんで同じ処置をしたのですが、神経を抜いたことを忘れるほど快適に噛むことができています。早くそうなって欲しいものです。