ピアノのある部屋から

ピアニスト、中添由美子がピアノのこと、教室のレッスンのこと、ロシアのこと、その他日々のいろいろを書き綴ります。

発表会に向けて2024-4

 


 いよいよ発表会まであと2日になりました。最終週に入ってレッスンに来る生徒さんの顔にも緊張感が見えます。藤野教室のレッスンの日は、空いている白石教室でグランドピアノに慣れるために練習に来る人もいます。

 今年はニューフェイスも多く、出演者の数も史上最高タイの33人になりました。出演する33人が皆、本番前の最後の1段を上がれるように、レッスンを進めています。

 

 出演者の生徒さんとともに私も新しい挑戦をしています。第3部では「ビバ、アルゼンチン!」と題して遠く南米、アルゼンチンからやって来たピアノ曲の数々をお届けいたします。

 曲目はこちらです。

 

 今年はコロナ禍による入場制限を撤廃いたしましたので、どなたでもお入りになれます。

 出演者の生徒さんを応援して頂ければ、とても嬉しく思います。

 

 

キーボードを買いました

 ピアニストという人種は毎日練習をするものなので、ピアノのない場所での練習をどうするかはとても頭の痛い問題です。旅行先や音の出せない早い時間に出発しなければならないときなどは、毎朝のウォームアップなしで舞台に立たなければならないこともあります。

 教室の発表会のときも会場入りは9時前後、出発は8時前ということがほとんどで、調整が充分できないまま演奏を迎えることが多いです。年齢とともにウォームアップなしではだんだんきつくなってきた上、今年のプログラム(グアスタヴィーノとヒナステラ)は大変ハードなので、指ならし用のキーボードを購入しました。

 

 購入にあたって一番悩んだのは、できるだけピアノのタッチに近いものでありながら持ち運びが楽にできるかということでした。結局決めたのは重さが2キロ弱というもの。もっとピアノのタッチに近いものもたくさんありましたが、これ以上重くなると、特に海外に持っていくのが大変になります。

 鍵盤はかなり軽めですが、それでも鍵盤でウォームアップができるだけでずいぶん違います。使い勝手はまだこれからということでしょう。またこれはPCに接続するとMIDIキーボードにもなるようです。まあこれについては発表会が終わってからゆっくり取り組みます。

 発表会当日は早めに会場入りして、ピアノの調律をしている間控室でこれでウォームアップをする予定です。

 

 

ビバ!アルゼンチン!2

 今月17日の発表会の第3部でアルゼンチンの曲に初挑戦すると決めてから、私はつとめてアルゼンチンのことを知ろうといろいろなものを読み漁りました。

 2016年10月、私はアメリカ、ダラス・フォートワース空港で成田行きの便に乗るためチェックインの列に並んでいました。ここは南アメリカ方面へのハブ空港になっています。ここからアルゼンチンの首都、ブエノスアイレスまでは10時間と書いてありました。成田までの飛行時間は実に13時間半、足してみると…あまりの時間の長さにため息が出ました。

 そんな遠い遠い国からやって来た曲の数々は新しい発見が一杯で、練習しながらワクワクする日々を送っています。

 

 ヒナステラの「3つのアルゼンチン舞曲 作品2」はたくさんの演奏がYouTubeに上がっていました。その中でJuan Peres Floristan(ホアン・ペレス・フロリスタン)というピアニストの演奏が特に気に入りました。

 この曲はテクニック的にも非常な難曲ですが、その難しさを超えて、「これぞ踊り」という印象を受ける演奏だったと思います。

 私はこの人のことを全く知らなかったので調べてみたのですが、1993年生まれ、2021年のルービンシュタイン国際コンクールの覇者、CDもいくつか日本で発売されているようです。何となく風貌が我が師匠パーヴェル・ネルセシアンの若い頃に似ているような気がする…

 

 願わくはこんなふうに演奏したいなあ、と思いながら日々ピアノに向かう今日この頃です。


www.youtube.com

嬉しい知らせ

 発表会(3月17日)のプログラムやお便りの配布が始まって、慌ただしく過ごしていた2月末、嬉しい知らせが届きました。

 現在の白石教室ができて間もない頃、うちの教室でピアノを始めた生徒さん(当時4才でした)が札幌大谷大学の卒業演奏会に出演が決まったそうです。大谷の卒業生の生徒さんに聞くと、なかなかの狭き門だそうで、その努力が実ったことはただただ感無量です。

 うちの教室に来ていたのは小学校6年生までだったのですが、その後良い先生や友達に恵まれ、今回の結果に結びついたのでしょう。

 

 昨年8月の私のリサイタルに来てくれて、終演後数年ぶりに会って、すっかり大人になったのに驚いたのですが、考えてみれば彼女ももう22才…

 時の流れの速さを改めて感じています…

 

 大谷の卒業演奏会は9日、土曜日の夕方なのでレッスンのスケジュールを一部変更して聴きに行くことにしました(この演奏会のためにレッスン時間の変更に応じて下さった方にお礼を申し上げます)。

 大きく成長した彼女の演奏を久しぶりに聴けるのを今から楽しみにしています。

ビバ!アルゼンチン!

 今年の発表会の第3部(私の演奏)は「ビバ!アルゼンチン!」と題して、遠く南米アルゼンチンで生まれた曲をお届けいたします。

 カルロス・グアスタヴィーノ(1912~2000)の「サンタ・フェの乙女たち」とアルベルト・ヒナステラ(1916~1983)の「3つのアルゼンチン舞曲」です。

 今年は私にとって重要な節目の年でもありますので、何か今まで弾いたことのないものに取り組んでみたいと思ったのがきっかけでした。

 

 ヒナステラの曲に出会ったのは、10数年前、教室の大人の生徒さんが持ってきた「ラテンアメリカピアノ曲集」という本でした。彼女はたまたま買ったこの本についていたCDの曲にハマり、この本だけではなく次々とラテンアメリカピアノ曲をレッスンに持ってきました。

 それから1年後、彼女は発表会でヒナステラの難曲「マランボ」に取り組みました。私の方も初めて教えるので、必死で勉強したのを覚えています。そのとき西洋音楽とは異なる独特の和音に私も強く惹かれ、いつかこの人の曲を弾いてみたいと思っていました。

 

 グアスタヴィーノの「サンタ・フェの乙女たち」は、2020年の発表会で2台ピアノ版を演奏しました。そのときにこの曲がとても気に入って、また演奏したいと思っていたのですが、今年に入ってピアノソロ版があることがわかって、今回プログラムに入れることにしました。

 

 どちらの曲もラテン系の爆発的なエネルギーが感じられる「濃い」テイストの作品です。私にとっても初めての挑戦なのですが、今まで弾いてきたものとは違うキャラクターに「こういう曲もあったのか」と目から鱗の毎日です。

 

 ラテンアメリカの作品を聴くのが初めてという方も多いことと思います。

 「どんな曲なんだろう…」と好奇心一杯で聴いて頂ければ、嬉しく思います。

 発表会についての詳細はこちらからご覧下さい。 www17.plala.or.jp/nakazoey/happyoukai2024.html

 

教室だより2024年春の号、只今作成中

 明日、2月26日からいよいよ教室の発表会(3月17日、きたこぶしホール、詳細はこちらからwww17.plala.or.jp/nakazoey/happyoukai2024.html)のプログラムの配布が始まります。プログラムと一緒にお渡しする教室だよりを作成中です。

 昨年5月に新型コロナが5類になって、会場からのコロナ対策の要請(来場者の連絡先の保存など)はなくなりましたが、まだ感染者は出ているので、引き続き消毒、換気などの対策は必要です。制限が亡くなった分、何を用意しどこまで対策をするべきかは非常に難しくなってきました。

 

 明日から本番3週前のレッスンに入ります。一人一人本番に向けて何が必要か、よく考えてレッスンを進めていきたいと考えています。

 

学校の伴奏

 うちの教室は発表会が毎年3月なので、何人かの生徒さんは卒業式などで歌う歌の伴奏を発表会の曲と並行して準備しています。自分のレベルより上の曲に挑戦している生徒さんにとって同じ時期にもう1曲を練習するのはやはりかなり大変です。

 

 今年伴奏が決まった生徒さんは私のところにレッスンに来るようになって5年目、発表会で長年憧れてきた曲を弾けることが決まって、とても喜んで意欲的に練習を始めていました。そんなとき発表会の2日後の卒業式での伴奏が決まったのです。

 早速楽譜を見せてもらったのですが、これが発表会の曲を上回るレベル…冬休みだから時間があるだろうと思ったのですが、正月休みが終わっても譜読みはあまり進まず、冬休みが終わるころになると焦りが見え始め、心が折れそうになっているのがわかりました。当然発表会の曲の方の練習も進んでいません。

 

 「決まったからにはどちらもきちんと弾きたい」

 

 と彼女は私に言いました。しかしどうしたら良いかわからないと。

 

 このようなときの心のケアはとても大切です。私も非常に悩みましたが、思い切って彼女に言いました。

 

 「こうなったら目の前のものから一つずつ片付けていこう。焦っていても何も変わらない。まず皆との合わせが迫っている伴奏の方を先に仕上げよう」

 

 私はその週は伴奏だけに集中するように彼女に言いました。

 これは大きな賭けでした。その週で伴奏が先が見えるところまでできなければ、発表会の曲の練習に大きな影響が出ます。ドキドキしながら次のレッスンを待ちました。

 

 そして翌週…

 

 何とか皆と合わせられるところまで仕上げてきたので、その週からは発表会の曲も一緒に練習するように言いました。伴奏が何とかできたことで彼女もホッとした気持ちになったようです。

 

 その翌週からは発表会の曲と学校の伴奏を並行してレッスンを進めることができるようになりました。彼女にとってはとても苦しい冬休みから3学期になったようですが、この体験はとても実り多いものだったと思います。将来大人になって一度にたくさんのことをこなさなければならなくなったときに、彼女は必ずこのときのことを思い出すでしょう。

 この先、来月の本番がどちらも良いものになるように仕上げをしていきたいと思っています。