ピアノのある部屋から

ピアニスト、中添由美子がピアノのこと、教室のレッスンのこと、ロシアのこと、その他日々のいろいろを書き綴ります。

ロシアだより2018 第5回(全6回)

 前回の続き、

  10月30日(火)
 生まれてこのかた見たこともない豪華なコンパートメントにまごまごしているうちに日付が変わってしまいました…
 タタール系と思われる凄いきれいな車掌さん(ロシアの車掌は圧倒的に女性が多いのです)が食事のメニューを持って現れました。
 「夕食は何にしますか?ここではレストランと同じようにあなたのお好みのものを持ってきますよ」
そう言われてもすでに午前0時過ぎ、こんな時間に食べるなんて考えられないし、列車に乗ったときのドタバタで疲れ果ててロシア語のメニューを読む気力も湧いてこない…しかし、夕食を早い時間に簡単に済ませていてお腹が空いていたので、サーモンのサンドウィッチと紅茶を注文しました。

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 紅茶はやっぱり「砂糖入り」と書いてあります(どうもロシア人にとって紅茶を砂糖なしで飲むのは考えられないらしい…タンボフに来るときの列車で同室者に紅茶を頂いたとき、砂糖はいらないと言うとびっくりされました)。「すみません。砂糖なしにできませんか?」と言うと、砂糖なしにしてくれたのだが、スティック砂糖をこんなに持って来た…

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 一応お腹が落ち着いて、寝る準備にかかります。専用のトイレ、洗面所、シャワーがついていますので、気兼ねなくお化粧が落とせます。シャワーもあったのだけど、この狭さでは何となくそのあたりを水浸しにしそうだったのでやめました。

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 ただ、このトイレはバイオトイレで流すところがついていない…そのため紙はトイレの横の屑籠に捨てなければならないらしい…(トイレットペーパーは洗面所のゴミと一緒に捨てないようにと書いてあります。いろいろ難しい)
 トイレ洗浄を探すのに多大な労力を使ってしまい、荷物を片付けてベッドを作って、やっと寝られる体制になったときにはすでに2時間半が過ぎていました。
 旅程は8時間18分なので、早く寝なければ寝る暇がなくなってしまう…
 ベッドはとても快適でした。もう少し寝ていたかったですね。

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 6時半に目覚ましをかけて横になりました。列車の揺れでときどき目覚めたりしましたが、それでも部屋に鍵がかかるので安心して3時間くらい眠りました。
 6時過ぎに目を覚まして窓から外を見ると…
 
 雪…線路が真っ白になっていました…

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 7:22、列車は定刻通りにモスクワ、パヴェレツ駅に到着。プラットホームがカチカチに凍りついていました。

 モスクワに着いた日に泊まった「イビス・モスクワ・パヴェレツカヤ」にアーリーチェックインをするためタクシーを探しましたが、白タクのクモスケばかり…それでも荷物が重い上、トランクのキャスターが壊れてしまったので、駅前広場でいくらか人相の良さそうな人にいくらで行ってくれるか尋ねてみると…
 500ルーブル(約1100円)!!
 タンボフに行くときホテルで頼んでくれたタクシーは129ルーブル(約280円)、完全に足元を見られています。
 アタマにきた私は「歩いて行く」
 またしてもパヴェレツ駅からホテルへこの大荷物を引きずって歩くことに…空きっ腹を抱えて、キャスターが壊れたトランクをやっとのことで引きずって、休み休みで40分かかりました。
 アーリーチェックインには朝食はついていないということだったので、いくらかお金を払って朝食を食べさせてくれないかと頼むと、無料で良いとのこと、これはラッキーだったですね。
 お腹が一杯になって、さすがに列車での3時間睡眠だけでは辛いので少し休むことにしました。

 この日の夜は、昨年夏まで札幌の在札幌ロシア領事館でアタッシェをつとめていたナージャと「チャイコフスキー・カフェ」に行きました。私がロシアに来ていることを知った彼女が連絡をくれ、モスクワのどこかでご飯を食べようということになったのです。

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 「チャイコフスキー・カフェ」は地下鉄マヤコフスカヤ駅(モスクワの地下鉄の中で私が一番好きな駅です)近くの「チャイコフスキー・コンサートホール」の中にあります。
 地下鉄マヤコフスカヤ駅のホーム、シャンデリアがきれい…

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 コンサートホールは2011年に師匠、パーヴェル・ネルセシアンのコンサートを聴きに来たことがあります。このコンサートを聴いて彼のレッスンを受けたいと思うようになり、今に至っています。

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 ドモジェドヴォ空港でJAL機を降りてから日本語を話すことも聞くこともなかった私は、彼女の流暢な日本語を聞いてホッとして身体の力が抜けました。
 タンボフとイワノフカのこと、札幌のこと、お互いの近況など話が尽きなくてあっという間に時が経ちました。
 彼女は札幌の海鮮料理がとても恋しいそうです。

 ここのケーキはチャイコフスキーの作品の名前がついているのです。「白鳥の湖」「くるみ割り人形」「スペードの女王」など。いろいろあってとても迷いましたが、私は2014年に全曲を弾いた「四季 Времена года」にしました。しかし、どうして梨の形なんだろう…

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 食事の後、話をしながら次のトヴェルスカヤ駅まで歩きました。どんどん変わって行く巨大都市モスクワ…私が最初にここへ来た1995年の面影はもうあまりありません。これからもこの街はどんどん変貌をとげていくのでしょう。

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