ピアノのある部屋から

ピアニスト、中添由美子がピアノのこと、教室のレッスンのこと、ロシアのこと、その他日々のいろいろを書き綴ります。

舞台復帰の日

 3月に右手甲の靭帯を傷めて以来6か月ぶりの本番の日がついに来ました。9月19日、母校、国立音楽大学の北海道同調会の定期演奏会です。演奏するのはチャイコフスキーのロマンス、ユモレスク、ロシアの踊りの3曲です。
 前日に車で函館入りしたので、前夜ぐっすり休めて、長距離運転の疲れは残っていませんでした。11時からホテル近くのヤマハ五稜郭センターでゆっくり調整。基本的な音階などの練習にいつもよりも多く時間をかけました。
 1時に練習を終えて、そのままリハーサルのため会場(函館市芸術ホール)へ。当初リハーサルは2時からの予定でしたが、2時半に変更になったので、先に館内でお昼を食べてからリハーサルに臨みました。
 このホールは初めてだったのですが、響きがとても良く、気持ちよくリハーサルできました。右手の音量に多少の不安があったのでピアノは小さい方が良いと思っていたのですが、スタインウェイのフルコン、しかしこれがとても良く調整されていて、弾いているうちにだんだん気持ちが落ち着いてきました。

 実はこの日が来るのがずっと怖かった…3月に怪我をして、1か月弱くらいで一日10分ずつくらいのリハビリ的な練習を始めましたが、痛みと痺れで続かない日が続きました。指くぐりもずっとできなかったので、音階やアルペジオが弾けるようになったのは6月になってからでした。曲が弾けるようになっても右手は自分の手ではないみたいで、思わぬところで止まってしまったりするので、恐怖感が抜けず、この右手は舞台で再び動いてくれるのかとずっと思っていました。
 しかし、何事にも第1回目があるし、ここで逃げてどうするのだとも思いました。
 同じ国立のキャンパスで学んだ様々な年代の方々と会って話をするのは毎回とても楽しみなのですが、この日はさすがにどうしようもなく緊張して口がきけませんでした。同じ楽屋の方々は随分怖い人だと思ったことと思います。

 出番前あまりにも緊張していたため、本番の舞台に出て行ったときは逆に「やっと戻って来れた」とホッとしました。もっとも右手は多少音量の足りないところもあったと思いますが…
 出番前ではなく、終わったあとに胃痙攣を起こしてしまったので、他の方の演奏は聴かず、楽屋で薬を飲んで休んでいました。
 
 国立音楽大学は今年度から学長がクラリネット奏者、武田忠善氏に変わりました。最後に学長の特別演奏があって、モニターで聴いていても素晴らしさが伝わってきました。最近、母校のレヴェルが低下したとの話も聞こえてきていましたが、ああいう現役でバリバリ吹いている人が学長になって大学の雰囲気も変わってくるのではないかと期待しています。

 終了後、何とか胃痛も治まったので、ほとんど食べられなかったけど打ち上げだけはしっかり行きました。今までになく緊張した分、思いっきりはじけてしまった…
 心配した右手は大丈夫でした。あとは精神的なものなので、これからは舞台で治していきます。