ピアノのある部屋から

ピアニスト、中添由美子がピアノのこと、教室のレッスンのこと、ロシアのこと、その他日々のいろいろを書き綴ります。

ただただ悲しい…

 今週は受難の週になりました。週明けからまたしても大雪…この冬何回目かもわからない悪路&深夜の車庫前の雪かきの連続…極度の寝不足でついに水曜日の夜にダウン…実家の母に応援を頼みました。

 そして木曜日の昼、何気なくSNSを開いてみると…ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まったというニュースが目に飛び込んできました。

 

 にわかに信じられず、翌日まで頭が真っ白でした。SNSで次々流れてくる記事を見ながら、これが間違いであって欲しいと願っていました。

 自分のピアニストとしての基盤を作って頂いたのがロシアでした。日本の大学院修了がソ連邦崩壊の時期に当たったため長期の留学はできませんでしたが、これも時代の流れと諦め、ロシア語を学び、短期でロシアに通いながら勉強を続けてきました。

 

 いろいろな所で演奏させて頂くうちにロシア人の友達もたくさんできました。その中にはパートナーがウクライナ人だったり、親の片方がウクライナ人で親戚がウクライナにいる人も多くいます。

 まさか…親戚同士が敵になるなんて…彼らが今どんな気持ちでいるか、考えただけで胸が苦しくなります。

 ほどなくロシアの友人たちが続々とSNS上で戦争反対の投稿を上げ始めました。

 レッスンに通うとき何度となく通ったモスクワの地下鉄の駅の通路に「Нет вайне(戦争反対)」と書かれている写真を見たとき、ああこれは現実なのだとさらに胸が締め付けられる思いがしました。

 

 それから3日、戦闘はどんどん拡大し、首都キエフでも民間人の犠牲者が多数出ているようです。子どもを連れてシェルターに避難している日本人の方の投稿がその緊迫感をより強く物語っていました。

 

 たった数日で街は今までの平和な風景から一変してしまいました。

 

 今世界中がロシアに対して批判の声を上げている状況です。今までの私のロシアへの渡航の際に出会った人々は皆、親切で情の厚い人ばかりでした。国と人とはやはり違うのでしょうか…

 ロシアTVのニュースは見るのも辛いのですが、ロシアの状況も知っておいた方が良いと思い、変わらず毎日見ています。

 願わくはこの戦争が一刻も早く終わるように、今の自分には祈ることしかできませんが、強く強く願っています。

 

 ロシア語のことでウクライナに関して、私は以前からずっと気になっていたことがありました。

 ロシア語で「~で」と言うとき、~に国の名前が入るときは前置詞は「в(読み方 ヴ)」だと教えられてきました。「~で」の前置詞はもう一つ「на(読み方 ナ)」というのがあって、こちらは国ではなく地域などのときに使われるのですが、ウクライナに関してはプーチン大統領をはじめ、ロシアTVのキャスターもすべて「на 」を使っていました。

 ソ連時代からの特別な習慣なのかと思い、ロシア語が非常によくできる日本人の方に聞いてみたところ、最近はどちらかをカッコ書きにすることもよくあるということでした。

 言葉と結びつく感覚の世界というのはなかなか難しいものがあるようです。