ピアノのある部屋から

ピアニスト、中添由美子がピアノのこと、教室のレッスンのこと、ロシアのこと、その他日々のいろいろを書き綴ります。

日本語格変化

 ロシア語を習っていると言うと、多くの方々に「難しいんでしょう?」と言われます。私自身は何語でも外国語を学ぶことは大変なことだと思っているので、ロシア語だけが特別難しいということはないような気がします。

 ロシア語=難しい、というイメージがあるのは、多分キリル文字のなじみのなさとあの格変化だと思います。
 ロシア語では名詞や形容詞がその性(男性形、女性形、中性形)、数、格(日本語の助詞に当たるものと言って良いのでしょう。~の、~をなどなど…)に応じて変化します。外国人でロシア語を学ぶ人でこの格変化に苦労しなかった人はいなかったと思える(そう思いたい…)ほど複雑なのですが、ネイティブの人はどうかと言うと、母国語を覚える段階でごく自然に出てくるようになるようです。
 そして、彼らは日本の地名や名字もロシア語風に格変化させて話したり書いたりするのです。ロシア語での会話やメールが増えてくると、私もこの日本語の格変化にも悩まされることとなりました。(確か、ロシア語を習い始めた頃、ロシア語圏以外の地名や人名は格変化しないと教わったような気がするのですが…ロシア語を学んだことのある皆さん、いかがでしょうか…)

 例えば、昨年の私のリサイタルで2台ピアノのパートナーをつとめてくれたパーヴェル(ネルセシアン)は和食がとても好きですが、その中でも彼が特に好きなのが「そば」。ロシア語で書くとсоба ですが、「そばが好きです」となるとたちまちсоба は対格(~を、を示す格)になってсобу (読み方、ソブ)となります。
 日本の地名も名字も「あ」の段で終わるものは必ず女性形に格変化しています。

 全く…もう…

 多くの方と同じようにロシア語の格変化を覚えるのに苦労してきた(今でも苦労している)私は初めこの変化にウンザリし、ロシア人のアタマの中はどうなっているんだろう、と思ったものですが、だんだんロシア語でのやり取りが増えてくるにつれ、慣らされてきたのか、だんだんゲーム感覚になってきました…

 よーし、私も格変化させてしまおう…

 メールを書くときに、日本人の名字をきちんとロシア語風に格変化させて書いて出したら、「上手になったね」と褒められて驚きました。

 褒められると途端に覚えが早くなり、しかも耳で聞いて覚えたことを次の瞬間から口に出せるのは私の数少ない特技…今では日本語も格変化させるようになってしまった…

 しかし、ときにはすぐにはわからないものも…

 メールでКавая(読み方、カワヤ)と書いて来られて、初めは
 何?厠?トイレか?
と思ったのですが、これは楽器店「カワイ」Кавайの生格(~の、を示す格)…ちなみにヤマハは生格になるとЯмахи(読み方、ヤマーヒ)になります。

 ロシア人と会話やメールをする以上、この「日本語格変化」は慣れなければいけないもののようです…