ピアノのある部屋から

ピアニスト、中添由美子がピアノのこと、教室のレッスンのこと、ロシアのこと、その他日々のいろいろを書き綴ります。

レッスン動画~伝えることの難しさ

 日頃一人で仕事をしていて、同業のピアノの先生方とはあまり話す機会がないため、井の中の蛙にならないよう公開レッスンや指導法セミナーなどには可能な限り行っていました。

 コロナ禍が始まってからこのような催しは動画配信に姿を変えました。今はいろいろな動画を検索して、家で観るようになりました。

 ピアノを始めたばかりの小さいお子さん向けのものから、専門的なテクニックを伝えるものまで実に様々なものがあります。この一年でいろいろな種類のものを観ました。

 

 検索していて特にたくさんヒットしたものが、レッスン形式ではなく講師が一人でピアノのいろいろなテクニックを説明しているものでした。この場合、対象はピアノを学ぶあらゆるレベルの人になるのでしょう。

 講師の方が説明しているピアノのテクニックを習得する方法は実に様々です。ピアノという山の頂上は同じでも、そこにたどり着くのには本当にいろいろな道があるということも改めて知ることになりました。

 いろいろなものを観ていて「このやり方で生徒さんにわかるのだろうか」と疑問を抱くものも中にはありました。こちらがわかっても生徒さんが間違って解釈してしまわないか、と心配になるものもあります。他人にものを伝えるということは何と難しいことだろうと改めて思います。

 

 動画で得た知識を生徒さんに伝えるときは神経を使います。動画で言っていたことを鵜呑みにするのではなく、まず自分が充分に身体に沁み込ませて、その上で一人一人に合うように「ここはどう説明しようか」と熟考してからレッスンの中で説明することが不可欠だと思います。テクニックの習熟度も手の形やサイズも一人一人違います。その人に合わせて、動画で得た知識にこちらでアレンジを加えた方が良い場合も多くあります。

 

 コロナ禍で人の行き来が難しい状況がずっと続いています。まだしばらくは不自由な生活が続きそうですが、師匠のオンラインレッスンや動画で何とか新しいものを取り入れながら演奏も指導も頑張っていきたいと思っています。