ピアノのある部屋から

ピアニスト、中添由美子がピアノのこと、教室のレッスンのこと、ロシアのこと、その他日々のいろいろを書き綴ります。

カプースチン「古典形式による組曲」、パーヴェル・ネルセシアン(動画)

 もう一昨年になってしまいましたが、2017年に師匠、パーヴェル・ネルセシアン氏が日本ツアーを行ったとき、プログラムに入っていたのがこの曲でした。ジャズのテイストと古典舞曲のリズム感が織り交ざったこの曲にとても惹かれて楽譜を買ってさらい始めたのですが、日本でも数多く弾いたのになぜ彼の演奏の動画がないのだろうとずっと思っていました。

 今朝、SNS経由でこの動画を見つけました。(こちら です)
 この曲の彼の演奏を聴いたとき真っ先に思い浮かんだのが、ボストンで受けたバッハの「フランス組曲第5番」のレッスンでした。そのときの彼の卓越したリズム感が強く印象に残り、何とかこういうリズム感を身体で感じて弾きたいものだと思いました。このカプースチンの曲はフランス組曲と同じようにアルマンド、ガヴォット、サラバンド…のような古典舞曲で構成されています。古典舞曲とジャズという一見真逆なテイストを彼は見事に融合して弾いています。あまりの絶妙さと自由さにため息が出ました。

 2012年に彼のレッスンを受け始めて間もなく7年になります。この間毎年欠かさず彼のレッスンを受けてきました。プロコフィエフの「シンデレラ」を2台ピアノで共演したり、右手を怪我して、左手の曲を弾きなさいと言われ、ラヴェルの「左手のための協奏曲」を持って行ったこともありました。思えばいろいろなことがありましたが、いつも感じたのは、彼の音楽に対する揺るぎない姿勢でした。
 毎回自分の持てるすべてを振り絞らなければならない厳しさに「もう限界か」と思ったこともあったのですが、今年もこの偉大な師匠のはるか遠くに見える背中を何とか追いかけて行きたいと思っています。