ピアノのある部屋から

ピアニスト、中添由美子がピアノのこと、教室のレッスンのこと、ロシアのこと、その他日々のいろいろを書き綴ります。

ラヴェルのコンチェルト

 ラヴェルの「左手のためのコンチェルト」。
 怪我で右手が使えないからこれしかないと思って何となく始めたのだけど、さらっているうちにどんどん面白くなり、のめり込んできました。
 昨年のリサイタルでプロコフィエフの「シンデレラ」(プレトニョフ編曲、2台ピアノ版)を弾いたので、今度はちょっとお洒落でハイセンスなものを弾いてみたいと思っていました。そんな私の希望にぴったりだったのです。
 まず、左手だけでこれだけの音楽的なものを表現できることが驚異でした。

 しかし…難しい…
 練習していて自分の左手がいかに不自由なものであったかというのがよくわかりました。これだけ音が多いとつい右手も使いたくなってしまうのですが、まだ私の右手はコンチェルトを弾ける状態ではありません(順調に回復していますが…)。何が何でも左手だけでやらなければならないのです。
 この怪我は私の左手を鍛えるための試練かも知れませんね。

 左手の曲を弾くこと…出口は一つしかない。
 2年前からレッスンに通い、昨年の私のリサイタルで2台ピアノのパートナーをつとめてくれたパーヴェル(ネルセシアン)は、私が3月の終わりに怪我をしたことを知らせたとき、こう返信してきました。
 この一言は大きなものでした。あのとき彼がああ言ってくれなかったら、私はこの曲を右手が弾けるまでの繋ぎとしてしか考えず、怪我をした右手のことばかり考えて悩み苦しんだと思うのです。しかし、彼に頑として言われ、私も肝が据わりました。
 この機会に左手を鍛えよう…
 
 連休明けには東京の先生のところにレッスンに行くので、連休中は一日を除いて家にこもってさらいます。