ピアノのある部屋から

ピアニスト、中添由美子がピアノのこと、教室のレッスンのこと、ロシアのこと、その他日々のいろいろを書き綴ります。

冷や汗ものの出来事

 初めて舞台で弾く曲というのはどんなにさらっても怖いものですが、先日の「ロシア音楽の歴史をたずねて2」のコンサートで全身冷や汗が出るような出来事がありました。
 スクリャービンエチュードをリハーサルしていたとき、2ページ目の真ん中あたりで右手と左手が全く合わなくなってしまったのです。

 いったいどうなってしまったのか…

 考えている暇はありません。仕方なくそこで止まり、何度かゆっくり弾き直してみましたが、もとのテンポに戻してみると、やはり合わない…
 自分でもどうなってしまったのかわからずに何度かゆっくり、速く、を繰り返したところでリハーサルは時間切れ…
 予定では6時にはリハーサルを終え、ゆっくり腹ごしらえをして(私はいつ何時もお腹が一杯でないと弾けない)本番に臨むつもりだったのですが、開場ギリギリまでさらってしまったため時間がなくなり、慌てておにぎりを口に押し込み、化粧を直す暇もなくそのまま舞台へ…
 
 リハーサルで崩れてしまったときほど本番が怖いことはありません。できるものならこの曲をやめたかった…
 「では、次はスクリャービンの作品です」と解説したときの私の心臓は、潰れたアンパンのようだっただろうと思う…
 8曲の中でこの曲だけすっぼり記憶がないのですが、とにかく速くならないことだけを心がけて、無我夢中でした。
 次に弾いたラフマニノフはすっかり安心してのびのび弾いたことだけは覚えています。

 こんなに本番が怖かったのは久しぶりだったのだけど、どこかで生徒さんがこの日の私と同じようになったときに、私のこの経験が役に立つかも知れませんね。
 そして、9月の第3回目のときはこのようなことが起きないように、念には念を入れて練習しなくてはなりません。