ピアノのある部屋から

ピアニスト、中添由美子がピアノのこと、教室のレッスンのこと、ロシアのこと、その他日々のいろいろを書き綴ります。

ラヴェルのトッカータ

 このお正月は家から一歩も出ませんでした。

 今年弾く曲にラヴェルの「クープランの墓」を選んで、今月パーヴェル(ネルセシアン)にもレッスンを受けるのだけど、何と最後の「トッカータ」が弾けないという事態に…途中で手が疲れてもたなくなってしまうのです。
 この曲を初めて手掛けたのは大学院のとき、公開レッスンでも何曲か弾きました。あのときは楽々弾けていたような気がするのだけど…
 
 年齢のせいか…
 それとも病気で一度手が動かなくなったから…

 思い悩んでいる場合ではありません。練習に集中できるこの休み中、私はこの曲を徹底的に分解して、どこで行き詰っているのか探してみることにしました。
 今まで弾けていた箇所が突然弾けなくなってしまうということは誰にでもあり得ます。今までの経験から、このようなときは速くばかりさらいすぎて崩れてしまっていることがほとんどなので、もう一度ゆっくりからやり直してきちんと確認することが不可欠だということ、そしてそれはとても根気のいる辛い作業だということがわかっていました。
 以前、そのとき弾いていた曲が崩れてしまった大人の生徒さんにもう一度細かい練習をやり直してみましょう、と言ったところ、
 「では、私が今まで必死でやってきたのは何だったんですか?」と言って辞めていったということがありました。
 そのときは唖然としたのですが、生徒さんにそうアドヴァイスするのならまず自分ができなければなりません。

 この曲の標準的な速さは大体メトロノームでいうと四分音符で138くらいだと思います。12月31日、まずこれを92まで落として、どこで手に無理がかかっているのか探してみました。どうやら原因はほとんど最初の2ページにあるようです。勢いだけで弾いていたからこういうことになったのでしょう。もう無理がきく年齢ではありません。この日は終日この速さでの練習となりました。
 1月1日、恐る恐る104まで上げてみました。何とかなりそうな感じ…まだまだ遅いが焦りは禁物です。
 2日、116くらいでも大丈夫になってきました。人間の感覚とは何と微妙なものだろう…ほんのちょっとしたことで大きく変わってしまうのです。
 3日、もう一度ゆっくりからやり直して126くらいまで…やはり、丁寧に練習すれば結果はついて来るのです。
 今日はまだこの曲を弾いていなくてこれからさらうのだけど138にしても大丈夫かな…でも危ないのでもう一度ゆっくりからやります…

 結局、こうして私のお正月休みは過ぎてしまいました。実家(白石教室、多くの年賀状はこちらに来る)にも行っていないので、まだ年賀状も見ていません。(年賀状を下さったのにまだお返事が行っていない皆さん、すみません。明日以降大至急書きます)
 
 明日からレッスンが始まりますが、この調子をいかに維持していけるかが大切ですね。