ピアノのある部屋から

ピアニスト、中添由美子がピアノのこと、教室のレッスンのこと、ロシアのこと、その他日々のいろいろを書き綴ります。

体の声を聞く…

 3年半の闘病生活から這い上がって舞台に復帰して1年余り…去年は割とのんびりモードで演奏活動をしていたのですが、今年に入ってからは舞台も増え、スケジュールも過密になってきました。ピアノが弾けること、舞台に立てることを心から幸せだと思って元気にこなしています。
 自分は3年前よりも力があると感じられること…これは病気になったことで唯一良かったことかも知れません。(と言ってももうあんな思いはしたくありませんが…)

 最近私が心がけていることは 毎朝の基礎練習をするときに必ず「自分の体の声を聞く」ことです。いくら元気になったと言ってももう体力があり余っているる年齢ではないわけですし、バレエをやっていて体がやわらかいと思われていても、やはり年齢と共に体が硬くなってきていることは感じます。
 
 単純な指の練習をするときはまず「手の向きは正しいか?」を確認します。前後にも左右にも自由に腕が動ける手の位置はわずかしかありません。以前 このことを先生に指摘されて直しただけで今まで弾けなかったストラヴィンスキーの「ペトルーシュカ」の和音の跳躍が簡単に出来てしまったことがあったので、正しい場所に自分の手がきちんと入っているか細心の注意を払います。きちんと入っていれば速いパッセージも跳躍も自由にできるわけで、うまくいかないときは必ずどこかに余計な力が入っているのです。

 と言うのは簡単ですが、実は私もうまくいかないときの方が多い…特に疲れているのにムリに早起きした朝などは必ず体のどこかが固まっていて、手や腕の動きを妨げることが多いですね。そんなときは自分の体の声を聞き、どこの筋肉が硬くなっているのかよく確かめて、そこをゆるめるように意識しながら基本練習を進めていくと少しずつ柔らかくなってきます。

 毎朝約1時間 自分でこのような練習をしてから生徒さんのレッスンやリハーサルに入るようにしています。また教室の中級以上の生徒さんにもこのことを少しずつ教えています。手の向きに気を付けると皆 腕が楽になるのを感じられるようです。

 私が今レッスンに通っている先生は今日 73才の誕生日を迎えました。あの年齢でテクニックを保ち続けて現役で演奏を続けていられるのは、やはりご自分の体の声を常に聞いてたゆまぬ練習を続け、無理のないテクニックを身に着けて来られたからだと思います。
 身近に偉大なお手本がいる私は幸せですね…これから年をとっていくとこうした地味な練習はもっと大切になってくるのでしょう。