ピアノのある部屋から

ピアニスト、中添由美子がピアノのこと、教室のレッスンのこと、ロシアのこと、その他日々のいろいろを書き綴ります。

何をどこまで教えるか?

 ピアノを習ったことのある方は痛感していると思いますが、ピアノを弾きこなすためにはやはり長年の技術的鍛錬が必要になります。一度に何もかもマスターすることは不可能ですから、テクニックのレヴェルに応じて少しずつ積み重ねていくことになります。
 教える方は常によく生徒さんのことを見ていて、その時その人に合ったテクニックを教えていかなくてはなりません。

 今 これを教えて大丈夫だろうか…まだ早いだろうか…こっちを先に教えた方が良いだろうか…

 お子さんでも大人でも、一人一人の生徒さんに対していつも私の頭の中はそのことで一杯です。もし その人にとって難しすぎることを言ってしまうと、たちまち故障につながります。特に今は寒いので、筋肉も筋も固くなることが多いですから、注意が必要です。だからと言って楽すぎることしかやらなければ、テクニックの向上は望めません。

 ピアノを弾く上で一番思うようにならないと多くの方が(実は私も)感じているのは、多分4,5の指(薬指と小指)の扱いだと思います。特に利き手でない方の4,5の指は動きが悪いですよね。中級から上級に差し掛かった生徒さんには、私が毎朝やっている4、5の指の訓練のプログラムを少しずつ教えています。しかし これはとてもハードな訓練なので、最初はほんの少しずつです。ハ長調から始めて半音ずつ上げてオクターブ上のハ長調まで13回弾くことで移調の練習も兼ねているのですが、初めの一週間はまず1回だけで様子をみます。もちろん手や腕がつらかったら必ず休みをとるように言います。
 最初の一週間で手が疲れないでできるようになったら、今度は2回、3回と少しずつ増やしていきます。あるところまで増やして手が疲れてきたら、それ以上増やさないで様子をみるか、ちょっと厳しいと思ったときは逆に回数を減らすときもあります。
 これは私が大学院生の頃 先生に習ったプログラムです。二十数年続けることによって、今はほとんど4、5の指に対する恐怖感はなくなっています。

 先週末も東京の自分の先生のところにレッスンに行って、テクニックもいろいろチェックされてきました。いつも新たな発見があります。今まで積み上げてきたことの上に更にいろいろなことを積み上げていけることを 今は心から幸せだと感じています。そして 自分の中で確実に身についたものを生徒さんに伝えていきたいと思っています。