ピアノのある部屋から

ピアニスト、中添由美子がピアノのこと、教室のレッスンのこと、ロシアのこと、その他日々のいろいろを書き綴ります。

姜尚中がゆく 韓国ルート1の旅(NHK BS1)

 3月の終わりに録画したままずっと見る暇がなかったのですが、最近ようやく見ることができました。
 もともと紀行番組は大好きで、テレビを見ただけでそこへ行った気分になってしまうのです。
 今までいろいろな番組を見ましたが、韓国は初めてでした。

  一般に「近くて遠い国」と言われるロシアが私にとっては言葉も話せるようになり、友達もたくさんいる「近くて近い国」であるのに対し、韓国は真に「近くて遠い国」でした。私には在日も含めて韓国、朝鮮人の知り合いは一人もいないし、言葉も一言もわかりません。

 どんなところなのだろう…それだけに一層興味が湧きました。

 番組は南部の木浦(モッポ)から国道1号線をバスで北上して行きます。
 世界有数の輸出大国になりながらも、格差も広がっているようです。経済的事情から親が育てられなくなって孤児院に預けられる子供たち、会社の不当解雇に抗議して鉄塔の上に籠城する人たち、学歴社会の中で自分の子供にはあえて違う道を歩ませようとする親たち…厳しい現実の中で必死に生きる人達の姿それぞれが胸を打つものがありました。
 やがて旅はソウルへと続き、パク・クネ大統領の就任式を経て、終点はあの38度線、北朝鮮との国境…最近ロシアのテレビニュースでも頻繁に登場していましたが、見るからに物々しい雰囲気です。朝鮮戦争のことは歴史の時間に習ったことしか知らなかったのですが、こうして映像を見ると、国が分断されるということはいかに大変なことかひしひしと感じられました。

 一番印象に残ったのは最初の木浦の孤児院での場面…一人の孤児が姜氏に相談を持ちかけます。
 「自分は孤児院にいることでまわりから白い目で見られることがあるが、どうしたら厳しい環境で頑張って行けるだろうか?」
 これに対して氏の答えは
 「孤児院で育ったことに否定的な見方をする人も世の中にはいるだろうけど、どんなことがあっても自分の信念を捨てないこと」
 この子は日本でいうと高校生くらいの感じですが、自分の目標をしっかり持っていて、自分の意見を的確に伝えることのできていると私は感じました。彼ならきっと厳しい環境でも頑張っていけるのではないでしょうか…

 この番組を見て、姜尚中氏の生い立ちや歩んできた道に興味を持った私は 氏の自伝的著作「在日」を読んでみました。第二次世界大戦終了まで朝鮮半島は日本の植民地だったということは知っていましたが、その中で多くの朝鮮の人々が日本に渡ってきて、想像を絶する厳しい生活をしていたということは全く知りませんでした。
 眉目秀麗な韓国の俳優が大人気を博し、韓国の料理がブームになっている(実家近くのスーパーには韓国食品の専用コーナーがあります)今の日本では考えられないようなことに、このような世界もあったのかという驚きで読みました。
 一冊読み終わってもう少し詳しく知りたいと思った私は、先日東京からの帰り 羽田空港の書店で「母(オモニ)」と「生と死についてわたしが思うこと」を買って機内で一気に読み切りました。

 今度モスクワへ行くときはソウル経由で行ってみようかなあ…実は千歳→ソウル→モスクワという大韓航空の便があって、これだと成田を経由しなくても良いので便利なのではないだろうか…
 今までロシアの方ばかり向いていたのだけど、韓国にも一度行ってみたくなっています…