ピアノのある部屋から

ピアニスト、中添由美子がピアノのこと、教室のレッスンのこと、ロシアのこと、その他日々のいろいろを書き綴ります。

ショパンコンクール2

 ポーランドワルシャワで行われていたショパンコンクールは昨日で受賞演奏会までの全日程が終了しました。日本人も反田恭平さん、小林愛実さんの2人がそれぞれ2位と4位に入賞し、音楽界だけではなく一般のニュースでも話題になりました。一般のニュースでも取り上げられたことでピアノに興味を持って下さる方が増えれば、ピアノに携わる者としてはとても嬉しいことです。

 ファイナルが終わって、反田さんは入賞すると思えました。そして、前回のコンクールでファイナルに残りながら入賞を逃した小林さんが今回、予備予選からファイナルまで終始その大きく成長した演奏を披露したのがとても印象に残りました。

 

 そして海外勢では…

 1次予選参加者87人全員を聴くことは到底不可能でしたので、まず他のコンクールで入賞して話題になっている人、そしてやはりロシアの出場者を中心に聴いていきました。

 やはりホジャイノフは1次から3次まで聴かせたと思います。私は3次の「ソナタ第3番」が好きだったので、この人がファイナルに残れなかったのはとても意外でした。代わってファイナルに残ったのが17才のゲヴァルギアン、何よりも若さと勢いを感じましたが、意外にも一番印象に残ったのが3次の「幻想曲」。強さと勢いだけだはなく、音楽もきちんと考え抜かれたものだったと感じました。

 また、1次の3日目に登場したアナスタシア・ヤスコ、彼女はエチュードの2曲目で一つのフレーズでどうしても先に進めなくなってしまい、何度か弾き直した後終わりの方に飛んでようやく曲を終わらせるということになってしまいました。現在ピアニストと言われる人達でこのような経験が皆無という人は、恐らくいないと思います(私にも経験があります)。大きな舞台でこのような失敗は立ち直れないほどの衝撃だったと思えますが、彼女はその後きちんと気持ちを立て直して、次の「スケルツォ第3番」を弾き終えました。やはり精神的にも鍛えられているのだと感じました。

 

 前回の優勝者が韓国のチョ・ソンジンだったこともあって、今回も彼に続けという韓国の優秀な若手が何人か登場しました。私が一番好きだったのはイ・ヒョク、3次で何かしながら聴いていてこの人いいな、と思って経歴を見たらモスクワ音楽院のオフチニコフ門下でした。あと、音の美しさが際立っていてぜひ生で聴いてみたいと思ったのがキム・スヨン、3次の「ソナタ第3番」が圧巻だったと思います。

 

 今、マズルカのリズム感に苦しんでいる私には、コンクールでたくさんのマズルカの演奏を聴くことができたのはとても幸運でした。いろいろな演奏を聴いた中でやはり納得のいくリズム感だったのはポーランド人…マズルカ賞はやはりこの国の人(ヤクブ・クシュリック)でしたね。

 

 今回ほどファイナルが終わった後誰が1位なのか見当がつかなかったことはなかったと思いますが、優勝したブルース(シャオユー)・リュウはすべての演奏が日本時間の明け方にかかっていて全くライブで聴けなかったので、優勝が決まってからファイナルから順番に1次まで聴きました。圧巻だったのが1次の「スケルツォ第4番」、ここまで切れ味の良いリズムで弾いた人は他にはいなかったですね。全部聴いて、やはり総合力で優っていたのは彼だったということになったのではないかと思いました。

 彼は1980年の優勝者であるダン・タイ・ソンの生徒なのですね。ダン・タイ・ソンが彼に「バラード第2番」のレッスンをしている動画が見つかりました。


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 ちょっと見ようと思って見始めたら、面白くて終わりまで見てしまいました…コンクールでのあの演奏は、このような緻密なレッスンによって作り出されたものなのだと改めて感じました。